« 「Michel & Augustin」ミッシェルとオギュスタン | トップページ | トマトナイフ、パンナイフ »

子牛肉(veau)のナゾ

以前、一時帰国した時、東京の新宿のどこかのフレンチ風(というかミックススタイル)の店で「子牛のステーキ」を頼んだ。
オーストラリア産だったと思う。
狂牛病騒ぎ以来、日本にはヨーロッパの牛肉は入ってないと思うので、フランスと違うのは当たり前だ。
だが、驚いたのは、この「子牛肉」が大人の牛肉のように赤かったこと。
子牛肉はこちらではブタ肉同様に「viandes blanches(ゔぃあんど・ぶらんしゅ:白い肉)」の1つ。
なので、赤い肉はあくまでも「オトナになった肉」、すなわち牛肉。
このあたり、日本の基準はいったいどうなってるのだろう?と疑問に思った。
肉に関しては日本はかなりいい加減そう、と思ったり・・・。


フランス語でググっていろいろなページを参考にしてみた。
さて、この「Veau(ヴォー:子牛)」、フランスではこの名前は12ヶ月まで使うことができる(た)そうだ。
ただ、EUの規定では8ヶ月まで、に変わったらしい。
9−12ヶ月齢のものは、若牛(jeune bovin)と表示することになったらしい。
このEUの規定では育て方に特に規定がないらしく、穀物をやってもいいのは許せないと、フランスやイタリアは不服そうだ。
ミルクで育てるのと、穀物をやって育てるのでは、肉の見た目も質も全く変わってしまうからだ。

フランスの「子牛肉」には審査基準がいろいろあり、ミルク中心で育てる必要がある。
年齢だけでなく、色や脂肪の入り方も重要。
白から薄いロゼ(ピンク)まではいいが、赤になると基準から外れ牛肉と同じ扱いになってしまう。
また脂肪が付き過ぎも同様で、霜降りの子牛はダメ。
また、穀物を与えて育てたものは「子牛肉」にはならない。

子牛肉用の育て方には、おおむね2種類ある。
1:「母乳を飲んでいる、乳のみ子牛」。
あくまでも牛から乳を飲まなくてはダメで、人の手で与えてはいけない。
これは「veau fermier(ヴォー・フェルミエ:農家の子牛)」とか、「veau sous mere(ヴォー・スール・メール:母の元の子牛)」とか呼ばれる。
商品にできるのは最高195日齢(約6ヶ月)まで。
また、体重は180キロまで。
非常に若いうちに商品にするならともかく、それ以降は他の餌も少しは食べるわけだが、母乳以外に与えてもいいものには細かい規則がある。
また、品種にも規定がある。
参考サイトはたとえばコチラとかコチラ(全部フランス語)。

2:「人工乳で人の手で育てる子牛」。
これは生後数日で親から隔離し、1匹だけの小部屋もしくは数頭入れた囲いで、人工乳だけ与えて育てるもの。
人工乳にはビタミンや抗生物質が添加してある(というか、添加しないと病気になる)。
1に似てるけれど、人為的にコントロールが可能なところがミソ。
脂肪が入りすぎないように、脱脂調整したミルクを使ったりするそうだ。
参考サイトはコチラとかコチラ(仏語)。
これもだいたい1に準じた飼育をするらしい(というか、そうしないと品質価値が上がらない)。
多くが1と同様5ー6ヶ月齢で肉になる。
もう少し長く育てても(9−12ヶ月)商品にはなるが、質は落ちがち。

1の方が2より一般に高品質とされ、表示することが認められている。
どちらの育て方にせよ、色が薄いほど高品質とされる。
こういう子牛肉は、においも牛肉よりぐっと少なく、脂肪が少なく、柔らかい。
一頭あたりが小さいので肉の量が少ないというだけでなく、この育て方の手間ひまのためにも、牛肉よりも高い肉となる。
またフランスでは、ダイエットしている人も、牛肉は避けても子牛を食べるのは、この肉質のせいである。


一方で日本の場合。
コチラのサイト、に説明を見つけた(日本語)。
それによると、ミルクのみの白っぽい肉の子牛肉もあるらしい(ミルクフェッド・ヴィール)。
だが、サイトの下の方に説明のある「grain fed veal(グレインフェッド・ヴィール)」というのもある。
(グラスフェッドとあるが、どう見ても間違いだと思う)
穀物(グレイン)をやって育てる子牛。
穀物を与えるとどんどん大きくなり、肉も赤くなり、脂もたっぷりな、子牛肉となる。
こちらのタイプが日本では「一般的な子牛肉」なのだそうだ。
これで12ヶ月とか育てて肉になると「書いてなければ牛肉と区別できない」ので、商品としてどの程度コントロールされているのか、疑問は残る。


フランスは子牛の年齢制限は大して違いはないが、肉の品質として赤くなったり脂肪が入りすぎると、「子牛肉」として売れなくなる。
で、穀物を餌に入れると簡単にぶくぶく大きくなる(生産量が増える)が、色も赤くなって子牛肉として認められなくなるので、フランスではやらない、ということのよう。
そのため、このオーストラリア産の赤身の子牛肉は、フランスでは子牛肉としては売れない、ことになる。


フランスやイタリアのように、白っぽい肉のまま育てるというのは、ホントに最初の授乳期を除けば、実は「貧血子牛」状態なのだそう。
なので、牛肉用には、この育て方はしない。
一方で、オーストラリアとかの育て方の「穀物」は、牛に取っては「高カロリー食」。
牛のような反芻動物に穀物を大量に与えるのは、人間に脂肪や砂糖を大量に与えて育てるようなものだ。
早く大きくなるが、ぶくぶくにもなる。
そんなわけで、全身フォアグラとも言える霜降りができあがるのだが、こちらも病気には違いない。
どちらがいいかはともあれ、穀物餌の牛肉はすでにあるので、子牛はミルクの方が肉質が違っていていいと思う。
赤い牛肉は苦手でも白い子牛は大丈夫、という人も出て来ると思うから。


さて、イタリアもフランスに次ぐ子牛肉の消費地。
育て方も基準も似ているらしい。
なので、イタリアでも子牛の肉は、白っぽい色。
ミラノ風カツが日本では豚肉が使われたりするのは、白い子牛肉が一般的でないため、日本人が間違えたんだったりして・・・?

« 「Michel & Augustin」ミッシェルとオギュスタン | トップページ | トマトナイフ、パンナイフ »

パリの日々ー食べ物系」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/148520/46106992

この記事へのトラックバック一覧です: 子牛肉(veau)のナゾ:

« 「Michel & Augustin」ミッシェルとオギュスタン | トップページ | トマトナイフ、パンナイフ »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

blog parts

  • Powered by Yahoo! JAPAN

    • ウェブ全体を検索

    • このサイト内を検索
  • meteo
  • whos-among-us (past 24 hours)
無料ブログはココログ